世田谷区でペットとくらす 2026.06.25

なぜ毎年打つの? 犬の狂犬病予防注射が「飼い主の義務」である理由

犬を迎えると、毎年春に「狂犬病予防注射のお知らせ」が届きます。「毎年打つ必要があるの?」「日本で狂犬病なんて聞かないのに」と感じたことのある方もいるかもしれません。けれど、この年に一度の注射には、飼い主とペット、そして地域を守るための大切な意味があります。

狂犬病は「発症したら助からない」病気

狂犬病の最も恐ろしい点は、発症するとほぼ100%死に至り、有効な治療法が存在しないことです。これは犬だけの話ではありません。狂犬病はすべての哺乳類が感染し、人にもうつります。感染した動物に咬まれることで、人にも感染するのです。

日本では長い間、狂犬病は発生していません。しかし、世界では今も年間およそ5万5千人もの人が狂犬病で亡くなっています。決して過去の病気ではないのです。

「日本は安全」と思われがちですが、油断はできません。平成18年には、東南アジアで狂犬病の犬に咬まれた日本人が、帰国後に発症して亡くなった例があります。人やモノが世界中を行き交う現代では、いつ国内に狂犬病が持ち込まれてもおかしくありません。だからこそ、飼い犬への予防注射で「もしものとき」に備えておくことが重要になります。

年1回の接種は「法律で定められた義務」

狂犬病予防法により、犬の飼い主には、生後91日以上の犬の登録(生涯に1回)と、毎年1回の狂犬病予防注射が義務づけられています。これは「できればやったほうがいい」という努力目標ではなく、飼い主が必ず果たすべき義務です。

万が一、国内で狂犬病が発生したとき、多くの犬が予防注射を受けていれば、感染の拡大を食い止める「壁」になります。一頭一頭の接種が、地域全体、ひいては社会全体を守ることにつながっているのです。

「義務」を、もっと身近に。話題のドタバタ動画

とはいえ、「義務です」「100%死に至ります」と正面から言われると、少し身構えてしまうかもしれません。そんな予防注射を、思わず笑顔になる形で伝えている取り組みがあります。

富山県の映像制作会社「とやまソフトセンター」が、狂犬病の集団予防注射会場の様子をYouTubeに投稿している「ドタバタ劇」シリーズです。注射を察知して逃げ回る犬、不満を鳴き声で表す犬、まったく動じずに打たれる犬――会場に集まるさまざまな犬と飼い主の姿が、温かいまなざしで切り取られています。

もともとは、自治体から「接種率を上げるために、注射の大切さを広めてほしい」と依頼されて撮影が始まったものだそう。義務を訴えるのではなく、楽しんで見られる動画にすることで、自然と予防注射の大切さが伝わる――そんな「北風と太陽」のような発想で作られています。2025年末にはSNSで大きな話題になりました。

注射を嫌がるわが子の姿に「うちの子も同じ」と笑いつつ、それでも飼い主がきちんと義務を果たしている。そんな光景が、予防注射を少し身近にしてくれます。気になる方は、ぜひ公式チャンネルでご覧ください。(筆者の推しは朝日町の柴犬、アムちゃんです。独特の鳴き声が可愛すぎです!)

とやまソフトセンター 公式YouTubeチャンネル(外部リンク):https://www.youtube.com/@t-soft-center

もしも、飼い犬が人を咬んでしまったら

予防注射の大切さがより実感されるのが、咬傷(こうしょう)事故が起きてしまったときです。どんなにしつけていても、思わぬ事故は起こりえます。

世田谷区の案内によれば、飼い犬が人を咬んでしまった場合、飼い主はまずケガをした人への応急手当と再発防止の措置を行い、24時間以内に保健所へ連絡して「事故発生届出書」を提出する必要があります。さらに、48時間以内に飼い犬に狂犬病の疑いがないかを獣医師に検診してもらい(検診は少なくとも2回必要)、その結果を保健所へ提出します。

逆に、犬に咬まれてしまったときは、小さな傷でも必ず医療機関を受診してください。犬の口の中には多くの雑菌があり、消毒などの処置が必要です。

こうした場面で、飼い犬が毎年きちんと予防注射を受けていることは、被害に遭った方を安心させ、飼い主自身を守ることにもつながります。日頃の備えが、いざというときに生きてくるのです。

(※咬傷事故の手続きは2025年12月8日時点の世田谷区の案内に基づいています。実際に事故が起きた際は、必ず世田谷保健所など所管の窓口にご確認ください。)

犬が人を咬んでしまったら:世田谷区(外部リンク)
https://www.city.setagaya.lg.jp/02245/712.html

海外に行くときも油断せず

最後に、海外へ渡航する方へ。日本国内では発生していなくても、世界には狂犬病が今も存在する地域が数多くあります。渡航先で安易に動物に触れないこと、危険度の高い地域へ行く場合は人用の予防接種を検討すること、そしてもし咬まれてしまったら現地で速やかに医療機関を受診することが大切です。

毎年の一手間が、家族を守る

世田谷区では、毎年4月から6月にかけて狂犬病定期予防注射を実施しています。注射を嫌がる愛犬を動物病院へ連れて行くのは、少し骨が折れるかもしれません。けれど、その年に一度の一手間が、愛犬を、そして人と動物がともに暮らすこの街を守ることにつながっています。

犬の登録や予防注射の具体的な手続きについては、こちらの記事でまとめています。

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